特許コラム

2012年4月10日 火曜日

中国のこと

 商標の問題において「日本の地名等も中国でどんどん商標登録出願されている」という報道がなされています。
 それはどこまで本当なのだろう、という点について、私は非常に「知りたい」と感じます。
 
 正直、この部分についてのメディアの報道というのは非常に「浅い」という気がします。「出願している」というだけなら、「そりゃあ出願する人もいるでしょう」と思うし、登録されたという点についても「看過という可能性もあるじゃないのか」とか「中国ではその言葉が一般名称として別の意味を持っているんじゃないのか」とも思ってしまいます。
 
 日本ででも中国人が見れば「何故?」と思うような商標が登録されているケースは多数あります。
 「中国銀行」とか「中国電力」が日本の会社だということについて、日本人は違和感を覚えないでしょうが、中国人からすれば「何故?」という気持ちでしょう。
 「三国志」「水滸伝」という商標を日本企業が持っているということについても、中国人の目から見れば、面白くないと感じるのではないでしょうか。また、「上海」とか「北京」という言葉で商標検索を行うと、何件かは日本企業の登録商標として検索にかかるものもあります。そのなかには、私の目から見ても、「これ、登録してもいいのか?」と思うようなものもあります。
 
 また、「讃岐うどん」が中国で商標登録された、ということも問題になりましたが、結局異議申し立てによって登録されなかった、というのが最終結論です。こういうのを読むと、別に中国政府としてもそこまで無茶する気はないのでは? とも思います。
 
 また、「中国人はモラルが……」という言い方にも疑問を覚えます。
 「偉そうに言うほど日本人はモラルが高いのか?」という反感もちょっとあります。かつて「阪神優勝」という商標を個人が勝手に登録していた、という事件があったのをみんな忘れたのでしょうか。日本人にだってモラルが低い人はいます。
 
 別に私は中国のことを褒めたいわけではありません。
海外の仕事をする上で、中国の実情を知りたいと思うし、そのためにバイアスのかからない客観的な情報が欲しい、と思っているだけです。その意味では今の日本のマスコミの報道の仕方では真実を知ることができない、と言いたいだけです。
最初から「中国はいい加減」「中国は知財なんか守る気はない」という前提で報道をしているので、情報にバイアスがかかっているように思います。
 
きちんと調査を行った結果、「中国の商標保護に問題あり」というのであれば、それは非常に有用な情報である、と感じます。しかし、この件に関する報道を見ていると、「うわっつら」の情報だけで結論を言っているようなので、正直、困惑しています。
 
 今は情報化社会だ、欲しい情報は何でもすぐに手に入る、といった言い方をする人もいます。しかし、私は「そんなこともないんじゃないのか」と思います。実際、知財に関する諸情報を集めようとすると、ネットを使っても確かな情報というのは案外手に入らないものです。
 むしろ、沢山の情報のなかから、「真に重要な情報」を選び出して整理するという作業が非常に難しくなっているのではないか、と感じます。
 

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2012年3月30日 金曜日

言い得て妙

 久しぶりの更新ですが、2012年3月最後の金曜日(っていうか今日)にまさに、「言い得て妙」という言葉に出会えたので、それを記録します。
 
 今日は、サラリーマン時代の同期と飲んでいました。彼と会うのは久しぶりでしたが、同期で20年の付き合いがあるゆえの気安さで色々なことを話していたのですが。
 その彼が別れ際に、私を評して
「いいかげん真面目じゃん」
と言ったのです(彼は神奈川県人なので)。
 
 まさにそれ。と思いました。私を表現する非常にぴったりの言葉を聞いたので、書き留めておきます。
 まあ、私を表現する上で、「いいかげん真面目」というのは非常に適切な言葉だ、と自分で思います。それが付き合いの長い友人の口から出たということで、それは「客観的な意見であろう」と思います。
 
 それが「どういう意味?」とか「もうちょっと詳しく説明して」とかいう野暮な質問への回答はしません。でも、きっと私のことを知っている人は、かなりの高確率で、その言葉の意味を分かってくれるような気がします。
 
 なので、うちの事務所は「いいかげん真面目な所長がやっている事務所」である、ということを広く公開したいと思ったので、酔っ払いながらの更新をしました。
 ついでに、私は「いいかげん」という言葉を悪口ではないと思っている、ということも添えておきます。

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2012年3月22日 木曜日

切り餅事件知財高裁判決


 地裁判決が出た時点では、こんなに話題になると思っていなかった切り餅事件の知財高裁判決が出ましたね。
 yahooのトップページにまで乗るし、NHKのニュースにもなったみたいですね。
とりあえず、2012年3月22日のニュース記事をコピーしておきます。
 
包装餅で売り上げトップの「サトウの切り餅」に入れられた切り込みが特許権を侵害しているとして、業界2位の越後製菓(新潟県長岡市)がサトウ食品工業(新潟市)を相手に、製造差し止めと594000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が22日、知財高裁であった。飯村敏明裁判長は請求を棄却した一審東京地裁判決を取り消し、製造差し止めと約8億円の損害賠償などを命じた。仮執行も認めた。(時事通信)
 
 ううむ。
 私個人は、狭い業界でしかも新潟の会社同士でこんな喧嘩をするのは果たしていいことなのだろうか? と根本的な疑問を感じつつ見ていたこの事件でしたが、約8億円の損害賠償の判決となったわけです。
 
 やはり、知財高裁が「プロパテント」(特許による保護を強化)という方向に向かっているのは確定ですね。
 その変わり目のタイミングに引っかかった幾つかの会社の方々は不幸なことですが、これからしばらくの間は、どこの会社の方も特許については要注意です。と同時に、特許で訴えようかと迷っているのなら、今は「訴えどき」かもしれないですね。
 
 ただ、被告側のサトウ食品工業さんも、ここまで意地になっていたのは、何か裏事情などがあるのでしょうか。何か「感情のもつれ」のようなものがありそうな雰囲気は感じているのですが、本当のところは当事者にしか分からないのでしょう。
 どなたか裏事情をご存知の方がおられましたら、また教えてください。

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2012年3月10日 土曜日

切り餅訴訟、両社とも和解勧告拒否 知財高裁、22日に最終判決

(新潟日報 3月9日)という記事がでていました。
 
「切り餅に入れる切り込みの特許権侵害をめぐり、越後製菓(長岡市)が佐藤食品工業(新潟市東区)に商品の製造・販売差し止めと、損害賠償を求めた訴訟で、知財高裁が勧告した和解を、両社とも拒否したことが8日、分かった。高裁は既に中間判決で佐藤食品工業の特許侵害を認め、22日には賠償額などを決めた最終的な判決を言い渡す予定。佐藤食品工業は最高裁に上告する見通しだ。

 和解協議は先月、知財高裁で3回にわたり行われた。関係者によると、飯村敏明裁判長が和解を提案したが、佐藤食品工業側は「特許侵害はしていない」、越後製菓側は「中間判決ですでに特許侵害は認められている」という趣旨の主張を繰り返し、最終的に協議は不調に終わった。」
 
 何かと話題になっている切り餅事件ですが、双方とも意地になっている感じですね。
 知財高裁ではすでに侵害との中間判決がでていて、損害額についての話になっていたわけなので、「非侵害」という結論になることはないでしょうから、いくらくらいの損害賠償を認めるのか、第三者としては興味深いところです。
 
 近年、日本の特許訴訟は「プロパテント」(要は、特許を強く保護する方向)に向かっている、と色々なところで言われています。そのことをアピールするのなら、こういう話題性の高い事件について高額の損害賠償額を認める可能性もあると思います。
 原告の訴え中では59億4千万円の損害賠償請求を求めているということですが、どうなるのでしょうか。
 
 しかし、「プロパテント」にせよ、その反対側の「アンチパテント」にせよ、どちらかが絶対的に正しいわけではなくて、その中間のどこか「いい塩梅」のところに落ち着かせることが重要、と感じます。なにごとにつけ、極端はいけないのであって、「適度」な感じに落ちつけばなぁと思います。
 
 私個人の考えとしては、今回のような事件に対して高額の損害額を認定するのはあまりいいことではない、と思っているのですが、裁判所はどう考えるのでしょうか。

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2012年3月 5日 月曜日

「百姓貴族」

「百姓貴族」の2巻(荒川弘 新書館)が出ましたね。
 荒川さんといえば「鋼の錬金術師」で有名な方ですが、こちらのエッセイ漫画も面白いです。
 荒川さんは北海道の十勝地方の農家の家の生まれで、この「百姓貴族」は農家での色々な経験をエッセイ漫画にしたものです。
 
 日本について「均質な国」なんてことを言う人がいますが、そんなの「幻想」じゃないのか、ってことを考えてしまうくらい、この漫画のなかでは私の知らない世界が繰り広げられています。
 農業の経験のない私からすれば、ぞっとするようなことが「当然のこと」として描かれていたり、改めて考えさせられたりするような話も多いです。「人は命を食べているのだ」とか「酪農の効率化は、命を操作すること」という重いことを、「そうしないと農家は生きていけない」という現場の事実を前提として描いています。
その言葉は重いものですし、正直、どんな理屈よりも圧倒的な説得力があります。
 
 さらにはこういった話を堅苦しくではなく、笑い飛ばしながら面白く読めるように描いている、というのがすごいです。これを小難しい文章で堅苦しく書いてしまったら、読もうという人の数は激減するでしょう。書店でも平積みされていたということは、かなり売れ筋ということでしょうから、作者の意図は完全に成功しているということです。
 こういう漫画が売れる、というのは健全なことという気がしますし、普段漫画を読まないような人でも読んで損はない、と思います。
 
 これ以上この漫画の内容について書くよりも読んでいただければ、と思います。
 あと、同じ作者の「銀の匙」(小学館)も面白いですよ。こちらはストーリー漫画なのですが、北海道の農業高校を舞台にしたもので、同じように深みを感じさせるものです。
「獣医になる夢を叶えるのに必要なもの」
という問いに対して、
「殺れるかどうか」
という答えというのはやはり「現場の意見」ですね。高校生の夢についての質問に対してはシビアすぎる回答です。
 
 でも、そうやってシビアななかで生きている人たちがいるからこそ、私たちはこうやって生きることができるわけで。それに対して「かわいそう」と言うのは簡単ですが、その一方で「牛肉が高い」とか文句を言っているわけです。
 なんにせよ、都合の悪いものからは目をそらして生きている、非農業の人間からすれば、色々考えさせられるところも多い漫画です。

投稿者 八木国際特許事務所 | 記事URL

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