特許コラム

2012年1月28日 土曜日

知財高裁大合議の判決


 知財高裁大合議での判決として、医薬品関連の事件についての判決が出ましたね。内容は新聞記事を参照願います。
 
 
 この事件、「大合議に行った」という話を聞いたときに地裁判決をざっと読んだのですが、どうみても地裁判断が妥当、という印象を抱いていたものでした。
 
 言ってみれば、「請求の範囲に製造方法が書かれている」のに、「製造方法が違っても物が同じなら権利侵害」という特許権者が主張していた、というものです。
 
 こちらに、知財高裁が本判決の要旨を公開しています。
 
 基本的に妥当な判断だとは思いますし、私が解説を加えるようなことは特にないと思います。
判決の結論よりも、ここで「真正プロダクト・バイ・クレーム」と「不真正プロダクト・バイ・クレーム」とに分けて議論しているところは、化学系弁理士であれば内容をチェックしておくべきなのだろうと思います。今後、類似事件が発生した場合の指針とすべく大合議での判断がなされたということなのでしょう。
 
 化学系の特許出願においては、無意識で「プロダクト・バイ・プロセス」形式で記載してしまうことは非常に多いです。私は、できるだけ意識して「プロダクト・バイ・プロセス」を避けるようにしています。しかし、それでもゼロにはならないです。
 
 発明者はあくまでも、「自分がやったこと」として発明を認識しているので、「方法」という観点から発明を説明されることになります。それをそのまま書くとどうしても「プロダクト・バイ・プロセス」形式になりがちです。
 それは悪いことではないと思うのですが、今回の事件で「不真正プロダクト・バイ・クレーム」という不名誉な称号を与えられてしまうのは、あまり心地よいものではないです。
 読んだ印象では、「不真正プロダクト・バイ・クレーム」だから無効になるとか権利侵害は認めない、というようなことではないようです。しかし、この「不真正プロダクト・バイ・クレーム」に該当する化学特許は極めて多いはずです。それだけに、「不真正」という悪い印象を与える言葉は避けて欲しかった・・・とも思います。
 皆さんも、「不真正プロダクト・バイ・クレーム」と言われたとしても、それ自体が悪いことではない、ということだけでも認識していただければ、と思います。
 
 私もこの判決は公開されればきちんと目を通しておこうと思います。本ブログでネタにするかどうかは別なのですが。


投稿者 八木国際特許事務所

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