特許コラム

2011年3月22日 火曜日

「世界経済を破綻させる23の嘘」

「世界経済を破綻させる23の嘘」(原題 “23 Things they don’t tell you about capitalism” ハジュン・チャン著 田村源二訳 2010年徳間書店)を読みました。
 
 邦題は「書店で目に付きやすいタイトル」を意識しすぎて嫌な感じですが、原題は、直訳すると「彼らがあなたに言わない資本主義についての23のこと」ということですので、こちらのほうがずいぶんとセンスがいいし、内容にも合っている、と思います。
 私は、本のタイトルに「破綻」という言葉を安易に使うセンスが好きになれないです。
 著者はケンブリッジ大学の准教授で、韓国出身の方です。
 
 とりあえず、この本を読んで私の「経済」に対する考え方はずいぶんと変わりましたし、非常に勉強になった、と思っています。「経済の専門家」を対象にした本ではないので、経済が苦手、と思っている方こそ読まれるといいのではないでしょうか。
 
 この本は、「自由市場主義」に対する批判を旨とするものです。
 要するに、規制緩和、小さな政府、グローバリズム、といったここ10年くらいになって突然語られ始めた色々な考え方が「自由市場主義」といえるのでしょう。すべてを市場に任せて、国家は経済運営に口を出さないほうがよい、という考えとでもいいましょうか。
 
 この手の「自由市場主義」批判の本は最近非常に増えてきているようですね。そして、その手の本のなかで、初めて読んだ本ということになります。
 
 この本を読もうと思ったのは、書店でパラパラと立ち読みしてみて、
「個人的な感情や、単なる印象を材料とした論理」
を排して、客観的な判断材料に基づく論理的な構成で議論が行われているように思ったからです。
 実際、この本を読み終わっても、この著者がどういった経歴の持ち主でどういう流れでオックスフォード大学で働くようになったのかは、全く分かりません。
 ということは、著者は「主観的な自分自身の経験」から議論を行っていない、ということであり、それは学者としてある意味で正しい姿勢であるように思います。
 
 本の内容について私が詳細に論評できるか、というとそれは無理です。何しろ、私は経済学に関しては素人ですから。しかし、「経済学」というものが「思想」であって、色々な考え方がある、ということにこの本を読むなかで気付かされました。その点が自分にとっての大きな「開眼」でした。
 
 この本に限らず、他にも多く「自由市場主義批判」の本が出ていること、最近のアメリカのオバマ大統領のやり方(保険改革、GMの国家救済など)を見ていても、「自由市場主義」は既に時代遅れになっている、ということかもしれません。
 
 とりあえず、私が経済を見ているのも「特許業界」という極めて特殊な業界を通して、ですが、それでも「自由市場主義」によるひずみは既に現れている、と思います。
 これをどのように改めていくのでしょうか。これから数年の間は色々なことが急激に変わっていくのかもしれません。
 
 この本は極めて冷静に、かつ論理的に「自由市場主義」に批判を加えており、書かれていることは非常に説得力のある意見だと思いました。
 もちろん、この本の主張が「絶対的に正しい」と言えるわけではないですが、今後「自由市場主義」に代わる新たなシステムの構築を考えるときの、一つの手掛かりになるのではないでしょうか。


投稿者 八木国際特許事務所

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