特許コラム

2011年2月16日 水曜日

仕事の楽しみ

 私が特許の仕事をするようになって、十五年くらいになります。
 で、それくらい経った最近になって、
「特許の仕事が楽しい」
と感じることが、時々はあるようになりました。本当に「たまに」ですが。
 
 言い換えると、最近になるまで本当の意味で「特許の仕事が楽しい」と感じたことは、ほぼなかったということです。
 
 それでも、企業時代、研究から知財に異動したばかりの頃は楽しいと感じることも結構ありました。しかし、それは、「今まで知らなかった世界」に入った物珍しさや、それまで知らなかった知識が増えていく楽しさだったように思います。
 それに、下っ端で責任もあまりない状態ですから、プレッシャーもほとんどなく、気ままに仕事ができるという有難さもありました。
 面倒くさいことになると上司が出てきて決めてくれたり、責任を取ったりしてくれる、という甘えられる状況でもありました。
 
 その頃の「楽しい」というのは、本当の意味で辛いことを免除されているから「楽しかった」だけで、真の意味での「楽しい」という状態ではなかった、と今振り返ると、思います。当時の自分は、それなりに頑張っているつもりだったし、「辛い」こともたくさんあると思っていたのですが。
 
 しかし、その後、弁理士試験に合格し、特許事務所に転職した辺りから真に「辛い」時期が始まりました。
 私の場合は、経験者で弁理士資格保有での転職でしたので、特許事務所では最初からある程度上のポジションからのスタートでした。そこで、「責任」を持って仕事をするという立場に初めてなったわけです。
 「責任」を背負って仕事をするのは、辛いことでした。弁理士は「代理人」ですから、自分の失敗でクライアントに迷惑をかけてはいけない、と思うと辛いと感じるばかりで、「楽しい」などと思うことはありませんでした。
 
 要するに「余裕」がなかったわけです。自分の能力にも自信がなく、日々の仕事で失敗しないように、できるだけのことをやらなければ、という気持ちが強すぎて、本当に辛い日々でした。
 それに特許事務所という組織に属していると、組織の中で自分の役割を果たす、ということについて、プレッシャーも感じていました。
 
 で、最近になってなぜ「楽しい」と感じる機会が「ごくたまに」生まれるようになったのだろう、と考えると、結局、ちょっとは余裕ができてきたということかもしれません。何となく、昔に比べて肩の力が抜けてきた、という気もします。
 それから、そんな感じで積み重ねた十五年間の経験のおかげで、相談されたことに対して少しはマシなアドバイスができるようになってきたような気もします。
そして、「自分のアドバイスが少しは誰かの役に立ったのかもしれない」と思う瞬間があると、それは大変「楽しい」ことです。
 
 なんで急にこんなことを書いたのかというと、ブログのアクセス解析を見ていると、「特許の仕事」というものに迷いを感じている方というのは多いのだな、という気がしたからです。
 
 私だって、この十五年間、ずっと迷うことばかりでした。これまでの知財経験のなかで、純粋に「仕事が楽しい」と感じられるような瞬間なんて、ほとんどありませんでした。だから、今迷っている方の気持ちも分からないことはないのです。
 でもそういう中で耐えることで、少しずつ自分の居場所ができてきて、本当に時たまとはいえ、「楽しい」と感じる瞬間ができてきた、ということです。
 
 今「辛い」と感じておられる方が、耐えて頑張っているうちに私と同じように将来「楽しいときも少しはある」と思えるようになるのかどうかは分かりません。しかし、少なくとも私はこうだった、と書くことで、今「辛い」方のちょっとした励みにでもなれば、と思ってこういうことを書きました。
 
 それと、少しだけとはいえ「仕事が楽しい」と感じられるようになってきたことが嬉しかったので、それを書き留めておこう、という「日記感覚」も半分です。
 願わくは、少しでも「仕事が楽しい」と感じられるような状態が長く続けばいいな、と思っています。


投稿者 八木国際特許事務所

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