特許コラム

2011年2月10日 木曜日

特許の国際出願件数

 今朝の日経に特許の国際出願件数についての記事が出ていましたね。
「世界知的所有権機関(WIPO)が9日に発表した2010年の特許の国際出願件数(速報値)で、2154件を出願したパナソニックが2年連続で首位となった。・・・(中略)・・・一方、「知的財産大国」を目指す中国勢が猛追。中国全体の出願件数は前年比56.2%増と大幅に伸び、2位と4位を中国の通信機器大手が占めた・・・(以下略)」(2011年2月10日日本経済新聞)
 
 もうこういう報道の仕方は止めたらいいのに、と私は思います。
 正直なところ、特許出願件数を、オリンピックのメダル数を競うかの如く、順位付けすることに何の意味があるというのでしょうか。ついでに言うなら、この統計はPCTの件数ですから、パリルートで出願しているものは反映されません。パリルートでの海外出願が多い会社は絶対にランキングに入らないことになります。
 
 特許出願数なんて、金さえかければいくらでも数を増やすことができるわけですから、それが技術力のみを反映するものでないことは明らかだと思います(まあ、無関係とまでは言いませんが)。
 パナソニックだって、別に首位を目指して首位になったわけでなく、必要なものだけを出願していたら、偶然首位になっただけ、ということでしょう。
 今年トヨタがベスト10から消えたということだそうですが、「だからトヨタの技術力が低下した」という意味では全くないと思います。
素晴らしい技術についての1件の特許は、つまらない特許10000件よりも価値が高いものです。特許の価値は数ではありません。
 でも、新聞ではすぐに件数に関する報道になってしまいます。
 
 会社の知財行政では、
「特許出願数を増やすべきと誰かが言い始める
→件数は増やしたけど中身のない特許が増える
→コストが無駄、と誰かが言い始める
→出願を絞り込んで質の高いものだけを出願しようという誰かが言い始める
→出願件数が減少する
→特許出願数を増やすべきという主張を・・・(以下同じ)」
でサイクルが回りがち、と私は個人的に思っています。
 
 「出願件数を増やそう」と言って、社内で増やすための運動をやることが間違っているとは言いません。そうすることで「技術が埋もれてしまう」ケースは減ります。しかし、件数だけを目標にした運動は長続きしないですし、会社にとってプラスにはなりにくくなります。発明者にかかる負荷も大きいですから、かえって研究開発が進まなくなる場合もあります。
 
 「××という事業目標を達成するには、この分野での特許出願を増やすことが絶対に必要だ。だから、この分野に関してはたくさん出願しなければならない」
といった、明確なビジョンのなかで出願件数を増やすのであればいいのですが、
「何か知らないけど、特許出願件数が多いのは絶対的な善だから増やそう」
という考えで出願件数を増やしても、会社にとって良いことは何もないと思います。
 


投稿者 八木国際特許事務所

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