特許コラム

2010年10月 7日 木曜日

弁理士と競争原理


 弁理士、特に平成14年度の弁理士試験制度改革が始まる前に資格を取得した弁理士は、皆、最近の制度改革について何か思うところがあるはずです。
 
別に、制度改革前の弁理士が全員素晴らしい仕事をしていて、絶対的に正しかったと思うわけではありません。
私も、企業の知財部門で特許の仕事を始めた頃(平成7年くらいです)に、きちんとした仕事をしてくれない弁理士に悩まされたことはありましたし、文句を言いたくなるような弁理士の方もおられました。
 
だから、「弁理士制度改革」をやることは別に構わなかったと思います。当時としては必要なことだった、とも思います。
しかし、この「この弁理士制度改革」が成功だったのか失敗だったのか、ということの充分な検証が現時点でも全くなされていない、という気がします。試験制度が変わったのが平成14年度から。そして、今が平成22年。いくらなんでも、何か検証が必要なだけの時間は流れたでしょう。失敗であったのなら方針転換も必要でしょうし。
 
それなのに、「本当にこの改革は成功だったのか」という問いかけもその問いかけへの回答もなく、どんどん弁理士制度が変わっていく、ということについて「どういうこと?」という気持ちです。
 
 試験制度が変わった後に合格された弁理士の方にも優秀な方は沢山おられるし、それを否定する気は全くありません。単純に制度改革が失敗だった、と断言する気もありません。
 
 しかし、弁理士制度改革のときには、「弁理士の数を増やして特許業界にも競争原理を働かせる」というようなことを言われていたように記憶しています。では果たして、現在の特許業界に「競争原理」は働いているのか? ということを考えると、甚だ疑問と思います。
 
現在、弁理士試験に合格したものの、就職先が見つからない人が多くなったと聞きます。そういう人は競争にさえ参加させてもらっていないわけです。更に、運よく就職できても、一部では特許事務所での弁理士の待遇が悪くなっているという噂も聞きます。
 
そう考えると、結局、需要のないところに供給を増やしただけ、という気がします。そのなかで、弱い者が割を食っているだけ、という状況のようにも思います。
 更に言うなら、「数を増やしたら競争原理が働く」というほど、世の中は簡単ではないし、競争が生じたら能力の高い人が生き残るわけでもなく、商売人として長けた人が生き残るとも思います。かえって、弁理士としての能力が高い人が淘汰されてしまうんじゃないか、という気もします。
 
 そもそも、この業界では弁理士試験に合格したから仕事ができる、というわけではなくて、現実の仕事では実務経験のほうが重要になります。
「実務経験を通じた知識」に触れるチャンスさえ貰えない弁理士が多く発生しているのなら、そういう人は「弁理士試験合格に使った労力を他のことに使ったほうがよかった」と言わざるを得ません。
 
 色々と悲観的なことを書きましたが、そうは言っても本当に優秀な弁理士の方であればまだまだチャンスは沢山あると思います。
 ただ、これから弁理士を目指す方には、
「この先の弁理士人生、ぼんやりしていたら誰も助けてくれないから、力をつけるためには自分で自分の道を切り開いて行って下さい」
と申し上げたいです。


投稿者 八木国際特許事務所

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