特許コラム

2010年10月 1日 金曜日

幽霊はいるのか?

というタイトルですが、特許ブログです。決してオカルトではありません。
 
このブログでは何度か「理系の論理性」と「文系の論理性」は違うということを書きました。その辺の話を少し掘り下げてみようかと思い、一つの例として「幽霊はいるのか?」という問いを考えてみたいと思います。
 
よく、「幽霊はいるのか?」という問いに対して
「幽霊はいない。だって、幽霊なんて科学的に証明できないから」
と言う人がいます。
この論理、理系的か文系的か、どっちだと思いますか。
 
私はこういう発想こそ、「文系的」なものだと思います。
なぜか?
それは、上の答えには、
「世の中のすべてのことは科学的に証明できる」
という前提があるからです。前提をもとにして、その前提にあてはまるかどうかで結論を導くという考え方(演繹法的とでも申しましょうか)は、文系的です。
 
では、理系的な発想は何かというと、
「幽霊が存在することを確定づけるデータが存在しないから、「幽霊は存在する」と断言することはできない」
といった感じでしょうか。こちらは帰納法的ですね。
 
理系の人というのは、実際に実験をしている人たちですから、世の中の科学的理論と言われるものはすべてが仮説にすぎず、理論に反する実験データが出てくれば、理論のほうが崩れてしまう、ということを知っています。
だから、簡単に「幽霊は存在しない」などと断言することもできません。せいぜいが、「幽霊は存在しない確率が極めて高い」という表現にとどまることでしょう。
そもそも、このような発想に基づく限りは、「○○は存在しない」ことを証明するのは不可能に近くなってしまいます。
 
一応お断りしますが、私は「文系の論理性」と「理系の論理性」のどちらかが正しくてどちらかが間違っている、などというつもりはありません。
ただ、「ちゃんとした弁理士」でありたいなら、両方の論理性についてきちんと習得しておくことが必要だと思っているだけです。
 
 なにしろ、法律について論じるときは、「法律に規定されたこと」という前提に基づいて理論を構築しなければならないのですから、「文系的な論理性」がなければ、審査官、裁判官という人たちを納得させられるような主張はできません。
 一方では、「理系的な発想」がなければ、そもそも発明の把握がちゃんとできなくなってしまうでしょう。
 
 特許業界の人は理系出身の方が多いですから、どちらかといえば「文系の論理性」に弱い人が多いように思います。
 私自身も、弁理士試験の受験生時代は、この「文系の論理性」の意味が理解できず、苦労したことを覚えています。ある時に突然、
「そうか法律における論理性というのはこういう前提で考えるのか」
と分かって、そこから後は勉強がスムーズに進みました。
 
 反対に、弁護士の方は「理系の論理性」に馴染みのない方が多いように思います。研究をしたことのない方がほとんどでしょうから、そうなるのが当然でしょう。しかし、知財訴訟を行う際には、この「理系の論理性」をないがしろにはできないはずです。
 
 いずれにしても「論理的に正しい」って何なのか? ということは非常に難しいことであり、そう簡単に結論づけられないことであるように思います。



投稿者 八木国際特許事務所

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