特許コラム

2010年8月 9日 月曜日

「街場のアメリカ論」内田樹


相変わらず暑いし、盆休みシーズンに突入するしで、なかなか特許のことを書く気にはなれないです。
そこで、最近読んだ本についてです。
 
内田樹氏といえば、もはや人気作家と言ってもよい方ですから、ご存知の方も多いのではないでしょうか。「日本辺境論」や「下流志向」等はかなり売れたという話ですし、書店でもかなり長い間平積みされていました。私もこれまでかなり多く内田氏の本を読んできましたし、ブログもチェックしています。
 
「街場のアメリカ論」(文春文庫)も、本屋で見ながらなかなか手に取ることはせずに、「いつか読もう」と思っていました。で、昨日本屋に行ったとき、「盆休みに入ったらゆっくり読もう」と思って購入しました。
が、面白いのであっという間に読んでしまい、今朝、読了しました。
 
いつも思うのですが、内田氏の本を読んでいるとき、私は頭のスイッチを半分くらい切って、言葉に身を委ねている気がします。頭で読んでいるというよりは、体で読んでいるというか。
うまく説明できないですが、そういう感覚になるので、読んでいるときにあまり疲れることがなくてあっという間に読んでしまうというか。そのあたりが人気のある所以ではないでしょうか。こういう「お堅い」テーマの本でも、エンターテインメントの本を読んでいるように楽しく読めてしまいます。
 
それはともかく。
アメリカという国のことを私は分かっていない、と思います。
特許という仕事をやっていくなかで、アメリカ出願のために米国代理人とやりとりをする機会は非常に多くあるのですが、どうも「アメリカ人の勘どころ」が分からない、という気持ちはなかなか抜けません。
 
外国特許という意味ではその他の国の特許も扱うのですが、感覚的に「分からない」という気持ちが一番強いのはやはりアメリカです。
 
そういう色々と「分からない」アメリカのことがこの本で分かったというような簡単なことではないです。読み終わった今もやっぱりアメリカのことは「分からない」ままです。
 
しかし、そう思いながら読んでいたら、文庫版のためのあとがきで
「(日本人は)アメリカについては、『知性的に理解する』ことについてさえ抑圧が働いているように見えることが問題なのです」
とくるわけです。そこで思い切り膝を打ってしまいました。
このあたり、やはりこの方は凄い人だなぁと。
 
正直なところ、私はこの本を読みながら、私がアメリカについてどうも理解しきれていないと思っているのと同じように、この著者もアメリカを理解しきれない、と自覚しているのではないか、と思っていたわけです。
「自らが知っている、感じているアメリカ」というものを流れるような文章で知性的に面白く書いているのですが、どこかで「結局アメリカを理解しきれない」と自覚しているんじゃないか、と。
 
そう思って読んでいたら、最後でこのようにくるわけで、そう来ると「本当にその通り」としか言いようがないわけです。こういう客観視ができるとは、やはり真の意味で知性的な方だなぁと感心してしまいました。そして、こういう内容の本のまえがきとあとがきに、日本人のアメリカに対する視線に関する密度の濃い文章を持ってくるところも。
本文は延々とアメリカについて書かれた本なのに、まえがきとあとがきの内容だけで「日本について書かれた本」になってしまうという。
 
この本においてアメリカについて書かれたことのディティールについて、誤りはあるかもしれないし、そこを指摘する人もいるのかもしれません。
しかし、そんなことでこの本の価値は損なわれることはないように思います。アメリカについて自分のほうが詳しい、という人であっても、結局内田氏が指摘しているようなことは書けなかったわけですから。
 
何にせよ、そんな堅苦しい本ではないですし、読んで損のない本であるように思いました。


投稿者 八木国際特許事務所

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